ABBAの「Fernando」は、1976年にシングルとして発表され、その後アルバム『Arrival』の豪華盤やベスト盤にも収録された楽曲です。作詞作曲はベニー・アンダーソンとビョルン・ウルヴァースに、スティグ・アンダーソンが加わっています。リードボーカルはフリーダが務め、彼女の柔らかく情感豊かな歌声が曲の世界観を深く引き立てています。
歌詞は一人称の女性が「フェルナンド」という人物に語りかける形で進行します。舞台は夜空の下。過去に共に戦った日々を思い出しながら、若き日の理想や情熱、そして戦いの記憶を振り返る内容です。当初はメキシコ革命を題材にした楽曲として書かれたこともあり、ノスタルジックで哀愁を帯びた雰囲気が漂っています。ただし、具体的な歴史的背景というよりは「過ぎ去った青春や闘志」を象徴的に描いており、多くの人が共感できる普遍的なテーマを持っています。
音楽的には、穏やかでフォーク調のサウンドが特徴的です。アコースティックギターを中心に、フルートやパーカッションが加わり、牧歌的で広がりのあるアレンジが施されています。華やかなディスコポップのイメージが強いABBAの中では、やや異色ながらも、その優しい響きは世界中のリスナーに受け入れられました。
「Fernando」はチャート面でも大成功を収め、オーストラリアでは14週連続1位を記録する空前のヒットに。イギリスでも1位、アメリカでもBillboard Hot 100で13位に入り、ABBAの国際的な人気を一層確かなものとしました。特にオーストラリアでの熱狂的な支持は、ABBAのキャリアを語る上で欠かせない出来事とされています。
この曲は後にミュージカル『マンマ・ミーア!』やその映画版にも登場し、世代を超えて愛され続けています。ABBAの楽曲の中でも特に情緒豊かで物語性のある一曲であり、ポップグループとしての枠を超えた表現力を示す作品と言えるでしょう。
Fernando/ABBA 歌詞和訳と意味
[Verse 1: Frida]
Can you hear the drums, Fernando?
フェルナンド、太鼓の音が聞こえる?
I remember, long ago, another starry night like this
ずっと昔のことよ、こんな星降る夜を覚えている
In the firelight, Fernando
焚き火の明かりに照らされて、フェルナンド
You were humming to yourself and softly strumming your guitar
あなたは小さく口ずさみながら、優しくギターを弾いていた
I could hear the distant drums and sounds of bugle calls were coming from afar
遠くからは太鼓の響きと、ラッパの音が風に乗って届いてきたの
[Verse 2: Frida & Agnetha]
They were closer now, Fernando
その音はだんだん近づいてきた、フェルナンド
Every hour, every minute seemed to last eternally
一時間一分が、永遠みたいに感じられた
I was so afraid, Fernando
私は怖くてたまらなかった、フェルナンド
We were young and full of life and none of us prepared to die
あの頃は若くて、命に溢れていて、死ぬなんて考えもしなかった
And I’m not ashamed to say the roar of guns and cannons almost made me cry
銃や大砲の轟きに、涙が出そうになったって、恥ずかしくはない
[Chorus: Frida & Agnetha]
There was something in the air that night
あの夜、空気の中に確かな何かがあった
The stars were bright, Fernando
星はあんなにも輝いていた、フェルナンド
They were shining there for you and me
あの光は、あなたと私を見守っていたの
For liberty, Fernando
自由のために、フェルナンド
Though we never thought that we could lose
負けるなんて夢にも思わなかったけれど
There’s no regret
それでも悔いはない
If I had to do the same again
もしまた同じことを選ばなきゃならなくても
I would, my friend, Fernando
私はきっと選ぶわ、フェルナンド
If I had to do the same again
何度だって同じ道を歩むわ
I would, my friend, Fernando
ええ、迷わずそうするの、フェルナンド
[Verse 3: Frida & Agnetha]
Now we’re old and grey, Fernando
今は私たちも年を重ねて、髪も白くなった、フェルナンド
Since many years I haven’t seen a rifle in your hand
もう長い間、あなたが銃を持つ姿を見ていない
Can you hear the drums, Fernando?
あの太鼓の音、まだ耳に残っているかしら、フェルナンド
Do you still recall the fateful night we crossed the Rio Grande?
リオ・グランデを渡った、あの運命の夜を覚えている?
I can see it in your eyes, how proud you were to fight for freedom in this land
あなたの瞳に、あの誇りがまだ宿っている――この土地の自由のために戦った証が
[Chorus: Frida & Agnetha]
There was something in the air that night
あの夜には、確かに何かが漂っていた
The stars were bright, Fernando
星は強くきらめいていた、フェルナンド
They were shining there for you and me
それは私たち二人を照らしてくれていたの
For liberty, Fernando
自由のために、フェルナンド
Though I never thought that we could lose
負けるなんて思わなかったけれど
There’s no regret
それでも後悔はない
If I had to do the same again
たとえ同じことを繰り返すとしても
I would, my friend, Fernando
私はまた選ぶわ、友だち、フェルナンド
There was something in the air that night
あの夜、確かに空気は震えていた
The stars were bright, Fernando
星はあんなにも美しく輝いていた、フェルナンド
They were shining there for you and me
あなたと私のために光っていたの
For liberty, Fernando
自由のために、フェルナンド
Though I never thought that we could lose
敗北なんて想像もしなかった
There’s no regret
でも悔いはないの
If I had to do the same again
もしもう一度同じ運命に立たされたとしても
I would, my friend, Fernando
私は迷わないわ、友だち、フェルナンド
Yes, if I had to do the same again
そう、もしまた同じことを選ぶなら
I would, my friend, Fernando
私は再び選ぶの、フェルナンド
[Outro: Frida & Agnetha]
If I had to do the same again
もし同じことを繰り返すのだとしても
I would, my friend, Fernando
私はまた選ぶわ、フェルナンド
曲名 | Fernando (邦題:悲しきフェルナンド) |
アーティスト名 | ABBA (アバ) |
収録アルバム | Frida ensam |
リリース日 | 1975年 11月10日(シングル) 1975年 11月10日(アルバム) |