1981年にリリースされた「Rapture」は、Blondieがニューウェーブとヒップホップを融合させた先駆的な楽曲として知られています。ボーカルのデボラ・ハリーが歌う艶やかでクールなトーンと、独特のラップパートが印象的で、当時のポップミュージックの常識を軽々と超えてみせました。

曲の前半は、クラブの熱気に包まれた夜を描きます。人々が壁一面にひしめき合い、音に酔いしれる情景は、まさに“ラプチャー(恍惚)”というタイトルの通りです。ハリーのボーカルは挑発的で、都会のナイトライフを象徴するような妖しい魅力を放ちます。

中盤からは一転し、彼女自身がラップを披露します。これはメジャーなヒット曲としては史上初の「ラップ入りNo.1ソング」となりました。内容はSF的な比喩に満ちており、「マン・フロム・マーズ(火星から来た男)」が地球に降り立ち、人々や車を“食べてしまう”というユーモラスな物語。ハリーがこの部分でオールドスクール・ヒップホップへの敬意を示しており、実際に当時のラップシーンを牽引していたGrandmaster FlashやFab 5 Freddyへの言及もあります。

「Rapture」は単なるダンスチューンではなく、ジャンルの垣根を壊した革命的な作品です。ディスコのグルーヴ、パンクの反骨、ヒップホップの自由なリズムを一曲に詰め込んだこの楽曲は、Blondieの冒険心と時代を読む感性を象徴しています。今聴いても、その実験精神と都会的なムードはまったく古びていません。

Rapture/Blondie 歌詞和訳と意味

[Verse 1]
Toe to toe, dancing very close
つま先を合わせて 肌が触れるほど寄り添う
Barely breathing, almost comatose
息もできないほどに 意識が溶けていく
Wall to wall, people hypnotized
壁の向こうまで 人々は催眠にかかったよう
And they’re stepping lightly
軽やかに足を運びながら
Hang each night in rapture
毎晩 陶酔に身を預ける

[Verse 2]
Back-to-back, sacroiliac
背中合わせで 腰の奥が共鳴する
Spineless movement and a wild attack
しなやかに揺れて 激しく仕掛ける
Face to face, sightless solitude
見つめ合っても 孤独は深く
And it’s finger popping
指先でリズムを弾かせて
24-hour shopping in rapture
24時間 快楽の街をさまよう

[Rap 1]
Fab 5 Freddy told me everybody’s fly
ファブ・ファイヴ・フレディが言った みんなイケてるって
DJ spinnin’, I said, “My, my”
DJが回すのを見て 思わず声が漏れる
Flash is fast, Flash is cool
フラッシュは速くて そしてクール
François c’est pas, flashé no deux
フランソワじゃない フラッシュは二度とない
And you don’t stop, sure shot
止まらない 確かなビート
Go out to the parking lot
駐車場へと出て
And you get in your car and drive real far
車に乗り込み 遠くまで走る
And you drive all night, and then you see a light
一晩中走って やがて光が見える
And it comes right down, and it lands on the ground
その光が降りてきて 地面に降り立つ
And out comes a man from Mars
中から火星人が現れる
And you try to run, but he’s got a gun
逃げようとしても あいつは銃を持ってる
And he shoots you dead, and he eats your head
撃たれて倒れ 頭を食べられる
And then you’re in the man from Mars
そしてあなたは 火星人の一部になる
You go out at night, eatin’ cars
夜になると 車を食べ歩く
You eat Cadillacs, Lincolns, too
キャデラックも リンカーンも食べ尽くす
Mercurys and Subaru
マーキュリーも スバルも平らげて
And you don’t stop, you keep on eatin’ cars
止まらずに まだ車を食べ続ける
Then, when there’s no more cars, you go out at night
車がなくなったら また夜に出かけて
And eat up bars where the people meet
人が集まるバーを食らう
Face to face, dance cheek to cheek
顔を寄せ合い 頬を重ねて踊る
One to one, man to man
一対一で 男と男が
Dance toe to toe, don’t move too slow
つま先を合わせて踊る 遅れずについておいで
‘Cause the man from Mars is through with cars
火星人はもう車には飽きた
He’s eatin’ bars, yeah, wall to wall
今はバーを食ってる 壁から壁まで
Door to door, hall to hall
ドアから廊下まで すべて食い尽くす
He’s gonna eat ‘em all
奴は全部食べ尽くす
Rapture, be pure
ラプチャー そのまま純粋でいて
Take a tour through the sewer
下水を抜けて旅に出ろ
Don’t strain your brain, paint a train
考えすぎずに 列車にスプレーで描け
You’ll be singin’ in the rain
雨の中で歌い出すの
Said, don’t stop to punk rock
止まらないで パンクロックのように

[Verse 3]
Man to man, body muscular
男と男 筋肉がうねる
Seismic decibel, bite the jugular
地を揺らす音で 喉笛を噛み切る
Wall to wall, tea time technology
壁一面に広がる ティータイムのテクノロジー
And a digital ladder
デジタルのはしごを登っていく
No sign of bad luck in rapture
不運の影などない 陶酔の中では

[Rap 2]
Well, now you see what you wanna be
ほら なりたい自分が見えてきたでしょ
Just have your party on TV
テレビの中でパーティを開けばいい
‘Cause the man from Mars
だって火星人は
Won’t eat up bars where the TV’s on
テレビがついてるバーには興味がない
Now he’s gone back up to space
今はもう宇宙へ帰っていった
Where he won’t have a hassle with the human race
人間と争うことのない場所へ
And you hip-hop, and you don’t stop
ヒップホップを刻んで 止まらない
Just blast off, sure shot
飛び立って 確かなビートで
‘Cause the man from Mars stopped eatin’ cars
火星人はもう車を食べるのをやめた
And eatin’ bars, and now he only eats guitars, get up
バーもやめて 今はギターだけを食べてる さあ立ち上がって

曲名Rapture
(ラプチャー)
アーティスト名Blondie
(ブロンディ)
収録アルバムAutoamerican
リリース日1981年 1月12日(シングル)
1980年 11月26日(アルバム)