ABBAの「The Winner Takes It All」は、1980年にリリースされたアルバム『Super Trouper』に収録されたシングルで、ABBAを代表するバラードのひとつです。タイトルは直訳すると「勝者がすべてを手にする」という意味で、恋愛や人間関係における勝者と敗者の残酷さを描いた歌となっています。ABBAの楽曲の中でも特にドラマチックで感情的な作品として、長く愛され続けています。

リードボーカルを務めるのはアグネタ。彼女の切なくも力強い歌声が、失恋の痛みを余すことなく表現しています。この曲はしばしば、ビョルンとアグネタ自身の離婚を反映したものだと語られます。実際、作詞を担当したビョルンは「直接的に自分たちのことを書いたわけではない」と述べていますが、それでも聴く人の多くが彼らの私生活と重ね合わせてしまうほどリアルで心に響く内容になっています。

歌詞は、愛が終わった後のどうしようもない無力感を綴っています。「勝者がすべてを手にし、敗者には何も残らない」というフレーズが繰り返され、恋愛の残酷さや喪失感を強調しています。しかし、その中に淡々とした受け入れの姿勢も見え隠れし、単なる悲しみだけでなく、人間の複雑な感情を映し出しているのが特徴です。

音楽的には、ピアノを中心としたシンプルながら壮大なアレンジが印象的です。サビで広がるメロディーラインとアグネタの歌声が一体となり、聴く人を一気に物語の中へ引き込みます。ABBAのポップな一面とは対照的に、クラシックに近い真剣なバラードとして仕上げられており、グループの音楽的な幅広さを示す一曲でもあります。

リリース後、この曲は世界中で大ヒットし、イギリスをはじめとする多くの国でチャート1位を獲得しました。アメリカのBillboard Hot 100でもトップ10入りを果たし、ABBAが世界的に評価されるきっかけとなった重要な作品のひとつです。

「The Winner Takes It All」は、ただの失恋ソングにとどまりません。人生における勝敗や喪失を受け入れる普遍的なメッセージを持ち、聴く人それぞれの経験と重なり合うからこそ、今なお多くの人の心に響き続けています。夜の静かな時間に聴けば、胸の奥にある感情をそっと揺さぶってくれるでしょう。

The Winner Takes It All/ABBA 歌詞和訳と意味

[Verse 1: Agnetha Fältskog]
I don’t wanna talk about things we’ve gone through
私たちが経験したことについて話したくはないの
Though it’s hurting me, now it’s history
私を傷つけているけど、それはもう過去のこと
I’ve played all my cards
私は持っていたカードをすべて出し切った
And that’s what you’ve done, too
あなたも同じことをした
Nothing more to say, no more ace to play
もう言うことはない、切るべきエースも残っていない

[Chorus: Agnetha Fältskog]
The winner takes it all
勝者がすべてを手にする
The loser standing small
敗者は小さく立ちすくむだけ
Beside the victory
勝利の傍らで
That’s her destiny
それが彼女の運命

[Verse 2: Agnetha Fältskog]
I was in your arms, thinkin’ I belonged there
私はあなたの腕の中で、自分の居場所だと思っていた
I figured it made sense building me a fence
囲いを作ることに意味があると思った
Building me a home, thinking I’d be strong there
家を築いて、そこで強くなれると思っていた
But I was a fool playing by the rules
でも私はルールに従っていただけの愚か者だった

[Chorus: Agnetha Fältskog, Anni-Frid Lingstad]
The gods may throw a dice
神々はサイコロを投げるかもしれない
Their minds as cold as ice
その心は氷のように冷たい
And someone way down here
そしてこの下の世界で誰かが
Loses someone dear
大切な人を失う
The winner takes it all (Takes it all)
勝者がすべてを手にする(すべてを)
The loser has to fall (Has to fall)
敗者は倒れるしかない(倒れるしかない)
It’s simple and it’s plain (Yes, it’s plain)
それは単純で明白なこと(そう、明白なこと)
Why should I complain? (Why complain?)
なのにどうして私が文句を言えるの?(なぜ言うの?)

[Verse 3: Agnetha Fältskog]
But tell me, does she kiss like I used to kiss you?
でも教えて、彼女は私がしていたようにあなたにキスするの?
Does it feel the same when she calls your name?
彼女があなたの名前を呼ぶとき、同じ気持ちになるの?
Somewhere deep inside, you must know I miss you
心の奥深くで、あなたも私が恋しいと分かっているはず
But what can I say? Rules must be obeyed
でも私は何も言えない、ルールは守られなければならないから

[Chorus: Agnetha Fältskog, Anni-Frid Lingstad]
The judges will decide (They decide)
裁くのは審判たち(彼らが裁く)
The likes of me abide (We abide)
私のような者は従うしかない(私たちは従う)
Spectators of the show (Of the show)
観客はただ見守るだけ(その舞台を)
Always stayin’ low (Staying low)
いつも低く身を潜めて(身を潜めて)
The game is on again (On again)
またゲームが始まる(再び)
A lover or a friend (Or a friend)
恋人か、それとも友達か(あるいは友達か)
A big thing or a small (Big or small)
大きなことか、小さなことか(大きくても小さくても)
The winner takes it all (Takes it all)
勝者がすべてを手にする(すべてを)

[Bridge: Agnetha Fältskog]
I don’t wanna talk if it makes you feel sad
あなたを悲しませるなら話したくない
And I understand, you’ve come to shake my hand
そして分かっている、あなたが握手をしに来たことを
I apologise if it makes you feel bad
もしあなたを嫌な気持ちにさせたなら謝るわ
Seeing me so tense, no self-confidence
緊張して自信をなくした私を見て
But you see, the winner takes it all
でも分かるでしょう、勝者がすべてを手にするの
The winner takes it all
勝者がすべてを手にするの

[Outro: Anni-Frid Lingstad]
So the winner takes it all
だから勝者がすべてを手にする
And the loser has to fall
そして敗者は倒れるしかない
Throw a dice, cold as ice
サイコロを投げる、氷のように冷たく
Way down here, someone dear
この下の世界で、大切な誰かが
Takes it all, has to fall
すべてを奪われ、倒れるしかない
Yes, it’s plain, why complain?
そう、それは明白なこと、文句なんて言えない

曲名The Winner Takes It All
(邦題: 勝者がすべてを取る)
アーティスト名ABBA
(アバ)
収録アルバムSuper Trouper
リリース日1980年 7月21日(シングル)
1980年 11月3日(アルバム)