デヴィッド・ボウイの「Ashes to Ashes」は、1980年にリリースされたアルバム『Scary Monsters (and Super Creeps)』のリードシングル。彼のキャリアの中でも特に内省的で、そして象徴的な作品です。この曲は、1972年の代表作「Space Oddity」で登場した架空の宇宙飛行士“メジャー・トム”のその後を描いた続編として知られています。かつて宇宙へ飛び立った彼は、今では「junkie(ジャンキー)」となり、地上からは絶望的な存在として語られる。その設定が、ボウイ自身の過去の影と重なって聴こえるのです。

「Ashes to Ashes」というタイトルは、聖書にある“ashes to ashes, dust to dust(人は塵に帰る)”という一節から取られています。つまり「すべては灰に還る」という意味。このフレーズには、人間の儚さや、名声や幻想がやがて消えていくというテーマが込められていて、1970年代のボウイが体験した名声の重圧や自己崩壊の影ともリンクしています。歌詞の中では、母親との会話を通して「メジャー・トムはもう帰ってこない」と告げるような描写があり、まるで自分の分身を見送るような切なさが漂います。

音の世界もまた、この曲の独特さを際立たせています。ニューウェーブとアートロックの中間にあるようなサウンドで、電子音と生演奏が不思議なバランスで融合。ブライアン・イーノと共に確立したベルリン時代の実験的サウンドを進化させ、さらにメロディの美しさと不穏さを共存させています。特に、夢の中のように漂うシンセサイザーと、ゆっくりと沈んでいくようなボウイのボーカルが、現実と幻想の境界を曖昧にしていきます。

ミュージックビデオも当時としては革新的でした。ボウイがピエロ姿で登場するその映像は、MTVが誕生する以前に制作されたにもかかわらず、後のミュージックビデオ文化に多大な影響を与えたといわれています。約25万ポンドという高額な制作費も話題となり、視覚芸術としての音楽表現を新たな段階に押し上げた作品でした。

「Ashes to Ashes」は、過去の自分と向き合い、それを受け入れて次の時代へ進もうとするボウイの姿を映した曲。華やかなキャリアの裏で、彼自身の弱さや恐れを音にしたような作品です。聴くたびに、幻想が剥がれた後の“本当のボウイ”が静かに顔を覗かせるような、不思議な余韻を残します。

Ashes to Ashes/David Bowie 歌詞和訳と意味

[Verse 1]
Do you remember a guy that’s been
昔の歌に出てきたあの男を覚えているかい?
In such an early song?
あんな初期の曲の中で
I’ve heard a rumour from Ground Control
管制室から噂を聞いたんだ
Oh, no, don’t say it’s true
いや、そんなの本当だなんて言わないでくれ

They got a message from the Action Man
行動派の男からメッセージが届いた
“I’m happy, hope you’re happy too
「僕は幸せだ、君も幸せでいてほしい
I’ve loved all I’ve needed, love
愛するべき人はすべて愛した
Sordid details following”
後は汚れた詳細が続くだけさ」

[Pre-Chorus]
The shrieking of nothing is killing
虚無の叫びが胸を裂く
The shrieking of nothing is killing
虚無の叫びが胸を裂く
Just pictures of Jap girls in synthesis
合成された日本の女の子の写真だけ
Just pictures of Jap girls in synthesis
合成された日本の女の子の写真だけ

And I ain’t got no money and I ain’t got no hair
金もなければ髪もない
I ain’t got no money and I ain’t got no hair
金もなければ髪もない
But I’m hoping to kick, but the planet is glowing
でも何とかしたいと思っている この星は光り輝いているから
But I’m hoping to kick, but the planet is glowing
でも何とかしたいと思っている この星は光り輝いているから

[Chorus]
Ashes to ash and funk to funky
灰は灰に、ファンクはファンキーに
We know Major Tom’s a junkie
僕らは知っている メジャー・トムは中毒者だって
Strung out in heaven’s high
天国の高みで引きずられ
Hitting an all-time low
史上最低の底に落ちていく

[Verse 2]
Time and again, I tell myself
何度も自分に言い聞かせるんだ
I’ll stay clean tonight
今夜はきれいでいようと
But the little green wheels are following me
でも小さな緑の車輪が僕を追いかけてくる

Oh, no, not again
いや、またかよ
I’m stuck with a valuable friend
大事な友と共に縛られて
“I’m happy, hope you’re happy too”
「僕は幸せだ、君も幸せでいてほしい」
One flash of light, but no smoking pistol
一瞬の閃光、でも煙を上げる銃はない

[Pre-Chorus]
I’ve never done good things
いいことなんてしたことがない
I’ve never done good things
いいことなんてしたことがない
I’ve never done bad things
悪いこともしたことがない
I’ve never done bad things
悪いこともしたことがない

I never did anything out of the blue, whoa whoa
突発的なことは何もしてこなかった
I never did anything out of the blue, whoa whoa
突発的なことは何もしてこなかった

Want an axe to break the ice
氷を砕くための斧が欲しい
I want an axe to break the ice
氷を砕くための斧が欲しい
Wanna come down right now
今すぐ地に戻りたい
I want to come down right now
今すぐ地に戻りたい

[Chorus]
Ashes to ashes, funk to funky
灰は灰に、ファンクはファンキーに
We know Major Tom’s a junkie
僕らは知っている メジャー・トムは中毒者だって
Strung out in heaven’s high
天国の高みで引きずられ
Hitting an all-time low
史上最低の底に落ちていく

[Outro]
My mama said to get things done
母さんは言ってた 物事はきちんと片付けなさいって
You’d better not mess with Major Tom
メジャー・トムに手を出すんじゃないと
My mama said to get things done
母さんは言ってた 物事はきちんと片付けなさいって
You’d better not mess with Major Tom
メジャー・トムに手を出すんじゃないと

My mama said to get things done
母さんは言ってた 物事はきちんと片付けなさいって
You’d better not mess with Major Tom
メジャー・トムに手を出すんじゃないと
My mama said to get things done
母さんは言ってた 物事はきちんと片付けなさいって
You’d better not mess with Major Tom
メジャー・トムに手を出すんじゃないと
My mama said
母さんは言ってた

曲名Ashes to Ashes
(アッシュズ・トゥ・アッシュズ)
アーティスト名David Bowie
(デヴィッド・ボウイ)
収録アルバムScary Monsters
リリース日1980年 8月1日(シングル)
1980年 9月12日(アルバム)