エアロスミスの「What It Takes」は、1989年のアルバム『Pump』に収録され、翌1990年にシングルとしてリリースされた楽曲です。バラード調ながら力強さもあり、彼らの幅広い音楽性を示した一曲として知られています。全米ビルボード・ホット100では9位を記録し、エアロスミスにとって80年代後半から90年代にかけての黄金期を支えたヒット曲のひとつとなりました。

歌詞のテーマは、愛する人との関係が終わりを迎え、それでもまだ未練が残っている男性の複雑な心情です。「君なしでは生きていけない」と訴えながらも、同時に別れを受け入れなければならない苦しみが描かれています。ストレートで情熱的な表現はスティーヴン・タイラーの歌声に乗ることで一層切実さを増し、聴く人の心に深く響きます。まさに“愛と喪失”という普遍的なテーマをロックバラードで描いた名曲です。

この曲は、スティーヴン・タイラーとジョー・ペリー、そして外部ソングライターのデズモンド・チャイルドが共作しました。チャイルドはボン・ジョヴィやキッスなどのヒット曲を手掛けた名プロデューサー兼作曲家で、彼のメロディセンスがエアロスミスの泥臭いロックに加わることで、よりキャッチーで感情的な仕上がりになっています。特にサビの高揚感は、このコラボレーションならではといえるでしょう。

サウンド面では、アコースティックな要素とエレクトリックなバンドサウンドが絶妙に融合しています。穏やかに始まりながらも次第に盛り上がり、サビでは力強く爆発するような展開が聴きどころです。タイラーのボーカルは繊細さと力強さを行き来し、失恋の痛みと諦めきれない想いをリアルに表現しています。

また、この曲には興味深い豆知識もあります。ミュージックビデオはカントリー風の演出で撮影されており、普段のハードロック色の強いイメージとは少し異なる雰囲気を持っています。さらに、後年エアロスミスはアコースティックバージョンも披露しており、こちらも人気を集めています。オリジナルの熱量ある演奏と対比することで、楽曲の持つ切なさがより際立つのです。

「What It Takes」は、エアロスミスが単なるロックバンドではなく、感情を深く描き出せる表現者であることを証明した曲です。激しいサウンドで知られる彼らですが、このバラードを聴くと“やっぱりエアロスミスはただのハードロックバンドじゃない”と感じさせられるはずです。

What It Takes/Aerosmith 歌詞和訳と意味

[Verse 1]
There goes my old girlfriend
元カノが去っていく
There’s another diamond ring
また新しいダイヤの指輪をはめて
And all those late night promises?
あの夜更けに交わした約束はどうなった?
I guess they don’t mean a thing
結局、何の意味もなかったんだな

So, baby, what’s the story?
なあ、どういうことなんだ?
Did you find another man?
別の男を見つけたのか?
Is it easy to sleep in the bed that we made?
二人で築いたあのベッドで、簡単に眠れるのか?
When you don’t look back
振り返りもしないお前を見て
I guess the feelings start to fade away
想いは少しずつ消えていくんだと悟った

[Pre-Chorus]
I used to feel your fire
かつてはお前の炎を感じていたのに
But now it’s cold inside
今は心の中が冷えきっている
And you’re back on the street
そしてお前はまた街に戻って
Like you didn’t miss a beat, yeah
まるで何もなかったみたいに

[Chorus]
Tell me what it takes to let you go
お前を手放すには、俺は何をすればいい?
Tell me how the pain’s supposed to go
この痛みはどうすれば消えるんだ?
Tell me how it is that you can sleep in the night
どうして夜に平気で眠れるんだ?

Without thinking you lost everything that was
お前の人生で大切だったものを
Good in your life to the toss of the dice
サイコロひとつで投げ捨てたことも考えずに
Tell me what it takes to let you go
お前を忘れるには、俺は何をすればいい?

[Verse 2]
Yeah
Girl, before I met you
出会う前の俺は
I was F.I.N.E, fine
ちゃんとやっていたんだ
But your love made me a prisoner
でもお前の愛が俺を囚人にした
Yeah, my heart’s been doing time
俺の心は刑務所で服役しているみたいだった

You spent me up like money
まるで金を使うみたいに俺を使い果たし
Then you hung me out to dry
最後には放り出した
It was easy to keep all your lies in disguise
お前の嘘を隠すのは簡単だったんだろう
‘Cause you had me in deep with the devil in your eyes
悪魔のようなその瞳で俺を深みに沈めたから

[Chorus]
Tell me what it takes to let you go
お前を手放すには何をすればいい?
Tell me how the pain’s supposed to go
この痛みはどうすれば癒えるんだ?
Tell me how it is that you can sleep in the night
どうして夜に平気で眠れるんだ?

Without thinking you lost everything that was
大切なものを全部失ったことも忘れて
Good in your life to the toss of the dice
サイコロひとつで賭けてしまったってのに
Tell me what it takes to let you go
どうすれば、お前を忘れられる?
Aw, guitar!

[Guitar Solo]

[Bridge]
Tell me that you’re happy that you’re on your own, yeah, yeah, yeah
一人でいることが幸せだと言ってみろ
Tell me that it’s better when you’re all alone
孤独のほうがいいんだと
Tell me that your body doesn’t miss my touch
俺の触れたぬくもりを恋しがってないって言えるのか?
Tell me that my loving didn’t mean that much
俺の愛なんて大した意味がなかったと?
Tell me you aren’t dying when you’re crying for me
俺を想って泣くときに、胸が張り裂けそうになってないって言えるのか?

[Chorus]
Tell me what it takes to let you go (Ooh)
どうすればお前を手放せる?
Tell me how the pain’s supposed to go (Oh yeah)
この痛みはどうやって消えるんだ?
Tell me how it is that you can sleep in the night
どうして夜に平気で眠れるんだ?
Without thinking you lost everything that was
お前の人生でかけがえのないものを
Good in your life to the toss of the dice
サイコロの運に任せて失ったというのに

[Outro]
Tell me who’s to blame for thinking twice
二度と迷わないと決めたのは誰のせいだ?
No, no, no, no, ‘cause I don’t want to burn in paradise
いや、いや…俺は楽園で燃え尽きたくなんてない
Ooo

Let go, let go, let go
手放せ、手放せ、全部手放せ
Let it go, let it go, let it go, let it go, let it go
忘れろ、すべてを
Let it go, let it go, let it go
手放せ、手放せ
Let it go, let it go, let it go, let it go, let it go
全部流してしまえ
I don’t want to burn, I don’t want to burn
俺は燃え尽きたくなんてない
Let it go, let it go, let it go, let it go, let it go
全部、手放すんだ

曲名What It Takes
(ホワット・イット・テイクス)
アーティスト名Aerosmith
(エアロスミス)
収録アルバムPump
リリース日1990年 2月26日(シングル)
1989年 9月12日(アルバム)